地震で家具が倒れてケガしたって話を聞くけど
どうやったら防げるの?
地震の被害と聞くと、まず思い浮かぶのは建物の倒壊ではないでしょうか?
ニュースで流れてくる建物が無惨に破壊されている映像は衝撃的です。
しかし、倒壊とまでいかなくても、命に関わる危険があります。
それが【家具の転倒】です。
家具の転倒は、大ケガのリスクに加え、パニックを引き起こす可能性を高めます。
ものが倒れる音や割れる音は、揺れの恐怖をさらに倍増させてしまいます。
そのため、家具をしっかり固定し、転倒を防止することで、パニックを防ぎ、怪我のリスクを格段に下げることができます。
今回は、実際にタンスの下敷きになった人の救出もした経験も踏まえ、地震の防災講話でも話している家具の転倒防止について説明していきます。
地震による家具の転倒防止【5種】
家具の転倒防止グッズは大きく分けると下記の5種類に分けることができます。
- L字金具
- ベルト式器具
- ポール式器具
- ストッパー式器具
- 粘着マット
それぞれの特徴を知って適切に対策しましょう。
耐震効果が最も高い【L字金具】
L字金具は耐震器具の中で最も効果が高いです。
イラストのように上向きでつけるものと、壁との間に下向きに取り付けるものがあります。
下向きL字金具が最も器具としての効果が高いとされています。
短所として壁に穴を開ける必要があるので、導入が遅れているのが現状です。
粘着式で、簡単に設置できるものも増えてきているので、壁に穴を開けられない場合はそちらを使ってみてください。
注意としては壁紙によってはうまく貼れない・剥がれないこともあるので、確認して使うことをオススメします。
震度7にも対応しており、穴を開けないタイプの商品です。
強度が強く、利便性の高い【ベルト式器具】
ベルト式器具は、壁にネジ止めをして、家具に繋げることで揺れを抑えることができます。
L字金具同様に壁に穴を開ける必要がありますが、穴を開けずに貼り付けれらるものもあります。
L字金具同様に壁紙との相性を確認して使用してください。
ベルト型には、ベルト以外にもチェーン式やワイヤー式と種類があるので、家や家具に合わせて好みのものを選ぶこともできます。
垂直や水平に繋ぐと耐震効果がなくなってしまうから適切に使ってね。
使うシーンは選ぶが使いやすい【ポール式器具】
ポール式器具は、家具の上と天井の隙間に突っ張りタイプの伸縮棒をはめこんで固定することで転倒を防ぎます。
一般的に言われる【突っ張り棒】と思ってもらえれば構いません。
設置の際に家具を浮かせたり、移動させたりする手間もなく、取り付けが簡単です。
穴を開ける必要もなく、道具も何も必要ありません。
ただし、強度は決して強いものではありません。
次に説明するストッパー式と組み合わせて使用してください。
注意がいくつかあり、天井の強度や天井までの距離といったことを確認する必要もあります。
目立たず家具を守れる【ストッパー式器具】
目立たず家具を守り、おしゃれな家具の外観を崩さず、滑るのを防ぎます。
耐震強度は弱く、転倒防止としてではなく、揺れの防止と思ってください。
家具の底に挟み込むことで、手前に倒れてこないようにします。
簡単に手に入り、費用も安く、設置も簡単ではありますが、耐震効果は低いので、あくまで他の器具との併用や揺れを抑えるものとして考えておいてください。
大きい家具には向いていないよ。
補助的なものと思ってね。
小型家電におすすめ【耐震粘着マット】
大きなものを固定することはできませんが、小型の家電や小物類はマットを敷くことで固定することができます。
耐震粘着マットには、丸型や四角型だったり、自分でカットできたりと様々なサイズがあり、色も透明や黒などがあるので、家具にあったものを選ぶことができます。
またジェルマットなど、水洗いで再利用できるものもあります。頻繁に動かして汚れてしまった時にも安心です。
耐震粘着マットの耐荷重は、製品によって異なるので、固定したいものの重さを調べて使用しましょう。
耐用年数が過ぎると効果が発揮できなくなるので、定期的に新しいものへの交換を忘れずに。
粘着といっても、きれいに、はがすこともできて、家具に引っ付く心配もないものも多いよ。
穴を開けたりする必要ももちろんないよ。
家電製品によっては、金属器具を取り付けてはいけないものもあります。
メーカーによっては転倒防止のために、専用のものを用意しているものもあります。
専用のものがあるなら専用のものを必ず使うようにしましょう。
家電を買ったら説明書を読んでみてね。
器具を買って使うより簡単な方法で転落防止処置ができるものもあるよ。
転倒防止器具 | メリット・デメリット | 向いている家具 |
---|---|---|
L字金具 | 最も強度が高い 穴を開ける必要がある | 大型家具(タンス等) |
ベルト式器具 | 種類が多い 壁紙を確認する必要がある | 大型家具・キャスター付きラック |
ポール式器具 | 穴を開ける必要がない 耐震性はやや低く、天井の強度も必要 | 天井に近い大型家具 |
ストッパー式器具 | 安い・設置が簡単 耐震性が低く、単独で使えない | 床に触れている家具 低い家具 |
耐震粘着マット | 手軽に設置できる 大きなものは固定できない | 小型家電 小物 |
転倒防止とともに対策するもの
転倒防止以外にも対策しておいて欲しいものがあります。
- 扉の開閉防止
- ガラスの飛散防止
- 照明の揺れ防止
- 家具の連結
扉の開閉防止・引き出しの飛び出し対策【耐震ラッチ】
食器棚やキッチンの戸棚には食器や包丁といった危険なものがたくさんあるので、地震対策が大切です。
耐震用として便利なものに【耐震ラッチ】があります。
普段は普通に使えますが、地震が起こると留め具が固定され扉が開かなくなります。
高性能な分、価格はやや高めではありますが、地震対策としては効果的です。
子育て世代であれば、赤ちゃんが扉を開け閉めしないようするベビーストッパーも使うことができます。
新しく防災用として買うよりあるべきものを使うことで、家計への負担を減らすこともできるので、オススメです。
ただし、強度は耐震ラッチに比べると弱くなる上に、扉の開閉を頻繁に行う場所だと手間に感じることもあるので、使用頻度と収容物で設置場所を検討してください。
一気にやろうと思うとなかなか手がつけれないから、特に危険なキッチンから始めてみよう。
ガラスの飛散防止対策【飛散防止フィルム】
地震によってガラスの飛散を防ぐには【飛散防止フィルム】を貼りましょう。
食器棚等のガラスや窓ガラスに使用することで、万が一の転倒や揺れによる家のゆがみでガラスが割れた時にケガを防ぎます。
フィルムをつけることで破片が散らばるのも防ぐので、避難や片付けの時の2次被害を防ぐにも役に立ちます。
一般的にはガラスの内側に貼る【内貼り用】が選ばれることが多いですが、どちらを使っても構いませんし、内外の両方に貼っても構いません。
ただし、内貼り用を外に貼ると劣化を早めますので、貼るときは注意してください。
防災用と防犯用は効果が違うけど、フィルムを貼ってるだけで、犯行を諦めるといった抑止力もあったりするよ。
照明の揺れ防止対策【ワイヤー】
シーリングライトやスポット照明であれば問題ありませんが、吊り下げ式の照明には注意が必要です。
揺れによって電球がカバーが割れる可能性があり、揺れによっては振り幅で飛んでいく可能性もあります。
メインのワイヤーを短くし、追加のワイヤーを設置しておくと安全です。
小さなライトが連なって並んでいるタイプは、揺れてぶつからないように繋げる器具が必要になります。
その製品専属のものが、外観を損ねず、安心ではありますが、汎用的なものも売っているので照明に合わせて使用してください。
見た目を考えると設置を悩む人がいるかもしれないけど、
危険を考えて最低限の処置はして欲しいな…
積み重ねる家具の連結対策【2段分離家具用連結器具】
大型家具の中には上下を積み重ねて一つにしているタイプがあり、注意が必要です。
固定をしていないと、家具が移動して、上部分が外れて落下したりといった危険があります。
連結部分をしっかり固定するには【2段分離家具用連結器具】を使ってください。
ネジ止めをするための平金具
「かんぬき」状の金具
シートタイプなどがあります
連結部分を固定するだけじゃなくて、家具自体の転倒防止も忘れないでね。
家具はどこでも固定できるわけではない
家具の固定で大切なことは、家具が地震の揺れに対して建物と一体的に動くように、柱や鴨居、壁などへ固定することです。
昔ながらの日本家屋であれば、しっかりした木の柱や鴨居に固定すればいいですが、そのような家も減ってきているので、壁に固定することになります。
しかし、壁といっても固定できる壁と固定できない壁があります。
家具を固定するには壁の中の桟を探す必要があります。
桟には縦方向の縦桟と横方向の横桟があります。
固定する家具にもよりますが、縦桟であれば、家具の高さを気にする必要がないので、縦桟を見つけていきましょう。
最近の集合住宅では桟が入っておらず、固定できない壁もあります。
壁に内側がコンクリートや断熱材の場合も固定できません。
配線が入っている場所は特に危険で変に固定しているとそのうち火災が起こってしまうリスクになります。
断熱材の入ってる壁に固定していると揺れが起こった時に、壁の表面が剥がれて家具も倒れてくることになってしまうよ。
地震の転倒防止対策器具を使わない予防方法
上記で説明したように、必ずしも固定器具がつけられる場合ばかりではありません。
また、どんなに対策をしていても、想定外のことが起こることだってあります。
固定をしっかりすることも大事ですがその前に、予防できることがないか見直しをしてください。
その方法を説明していきます。
しっかりやったつもりでもミスがあることだってあるし、大丈夫と思ってた場所が壊れてしまうなんてこともあるからね。
できる予防はやっておくことが大切だよ。
寝室や出入り口には家具を置かない
睡眠時は1番危険なので、寝る部屋に大きな家具を置かないことは鉄則です。
どうしても置かざるえないという家庭は、倒れても寝ているところに影響がなく、出入り口をふさがない場所に設置してください。
出入り口付近も家具は置かないようにしてください。
寝室と同様に置かざるえない場合は通り抜けることができる位置に設置してください。
他にも生活の中でよくいる場所にはなるべく置かないようにしましょう。
地震は最初から大きな地震の時ばかりではなく、小さな揺れの場合、避難せずに様子見をしてしまいます。
揺れが大きくなってしまった時にぶつかる危険はもちろんですが、ものが倒れそうになると思わず無意識に倒れないように支えようとしてしまい、ケガをしてしまう可能性が高くなります。
そのため、ソファや勉強机、食卓の座る場所の近くには家具を置くのはなるべくやめましょう。
重いものはなるべく下へ
家具にものを収納する際は、重いものを下にしましょう。
重心が低くなれば、それだけ転倒するリスクは下がります。
上の方が揺れも大きくなるから、中身が飛び出してくるリスクもあるからね。
家具の上にものを置かない
家具の上にものを置いておくと、落ちてくるだけで、大きなケガをする可能性もありますし、近くのものを壊してしまうことになります。
また揺れによっては大きなものでも飛んでしまうため、大きな凶器になってしまいます。
家具の上にものを置くのは危険だということは覚えておいてください。
危ないだけではなく、揺れにより隙間にものが入ってしまい、転倒対策をしていても、元の位置に戻ることができなくなってしまって、転倒したり、中途半端に傾き危険になることもあります。
買い替えれるなら買い替える
急に買い替えるとはなかなかならないかもしれませんが、古くなっていて新しくしたい場合は安全なものに買い替えることを考えておいてください。
タンスや棚は低いもの、ライトはシーリングライトに変えてしまうことでかなり安全になります。
まだまだ買い替えなんて考えていないという人は、向きを変えるだけでも危険度は下がります。
家具は手前に倒れやすいものが多いので、それを意識して、逃げ道をふさがない向きに配置を変えてみてください。
家具はどれぐらいの地震で転倒するのか?
平成8年2月に気象庁の発表によると【震度5強】でタンスなど重い家具が倒れ、テレビが台から落ちるとされています。
これは戸建ての住宅の話で、マンションの高層階になると長周期地震動により、同じ震度でも家具の転倒リスクが高くなります。
長周期地震動とは
規模の大きい地震の場合、揺れの1往復する時間が長くゆっくりとした大きな揺れが生じます。
これを長周期地震動と言います。
大きな地震では、転倒の恐怖に加え、ものが左右に飛び回る状態になります。
そして、阪神淡路大震災では下記のように約6割の部屋で家具が転倒、散乱したというデータがあります。
このデータは震度7地域と災害救助法適用地域のデータなので、震度が6強以下であれば割合としては、減るかも知れませんが、転倒や散乱が決して減るわけではありません。
震度7なんて滅多に起こらない…
そんなことはなく阪神淡路大震災以後も日本では震度7の地震が起こってるよ
- 2004年10月23日 新潟中越地震
- 2011年3月11日 東日本大震災
- 2016年4月14日〜 熊本地震
- 2018年9月6日 北海道胆振東部地震
地震による家具の転倒でどれぐらいの人がケガをしているのか?
では実際家具の影響でどれぐらいの人が負傷してしまっているのでしょうか?
- 2003年十勝沖地震 負傷者849人
- 2004年新潟県中越地震 負傷者4,805人
- 2005年福岡県西方沖地震 負傷者1,204人
- 2007年能登半島地震 負傷者356人
- 2007年新潟県中越沖地震 負傷者2,346人
- 2008年岩手・宮城内陸地震 負傷者426人
- 2011年東日本大震災 負傷者6,242人
- 2016年熊本地震 負傷者2,809人
- 2018年大阪府北部地震 負傷者462人
上記のように多くの方が被災し、負傷しています。
でわ、その中でも家具等による負傷者の割合は、どうでしょうか?
上記のデータから、家具類によるけが人は、近年の地震でも30%〜50%とかなりの割合であるといえます。
家具の転倒防止をすればこの割合は必ず減るよ!
地震対策していない家具はどうなるのか?
地震の揺れの防止は大切です。
それと同時に地震が起きると家具がどうなるか知っておくことも重要になります。
家具にあった転倒防止対策に役に立つのはもちろん、家具の特性を知っていれば、素早く離れるべき場所が分かるようにもなります。
家具がガタガタと揺れて上に置いているものが落ちてくる
揺れているだけで倒れないなら大丈夫ということはありません。
家具が転倒する震度は5強とされていますが、揺れに関しては震度4でも起こります。
揺れによりリスクは以下のようになっています。
- 食器棚の中のガラスのものが割れる
- 上に置いてあるものが落下する
- 収納しているものが破損する
- 扉や引き出しがゆがむ
- 照明が落ちてくる
地震の揺れで家具が移動する
揺れにより、家具が移動したり、飛んで行ったりします。
移動することにより、避難経路をふさいでしまったり、ケガをしてしまいます。
冷蔵庫や大きなタンスも揺れによっては大きく動いてしまうこともあります。
特にキャスター付きの家具はストッパーをしていたとしても安心できません。
複雑な動きをし、移動も他の家具に比べて勢いよく、ケガのリスクが高いです。
またフックにかけているようなものは飛んでいってしまいます。
調理器具をかけて収納している家は飛んでくるリスクがあることを十分知っておいてください。
家具が転倒し、ガラスが割れる
ガラス戸の家具は転倒すると、ガラスが割れて飛び散る可能性があります。
また転倒した先に、窓があったり、花瓶などのガラス製品があれば、割ってしまうことになります。
ガラスの破片によって切り傷を負ってしまうので注意が必要です。
また避難経路をふさがれなくても、ガラスが散乱してしまうと、素足で避難は難しくなります。
家具の引き出しが飛び出す
使ってる人が減ってるかもしれませんが、タンスは特に危険です。
他にも引き出しがあるものは危険があることは知っておいてください。
引き出しが人にぶつかって、ケガをしたり、ものにぶつかって壊したりといったことが起こります。
また収納していたものを吹き飛ばしていくなんてことも起こります。
転倒して避難経路をふさぐこともあるし、引き出しが避難経路をふさぐなんてことも起こってしまうよ。
家具の扉が変形したり、開閉する
揺れによって、扉が開かなくなるというのはご存知の人も多いでしょう。
同じように家具の扉も変形してしまう場合があります。
家具の扉が変形することで、扉が落下する危険があることを知っておいてください。
変形だけでなく、扉が勢いよく、開閉する場合もあります。
ぶつかったり、挟まれたりして、ケガのリスクはもちろん、激しい開閉する音は恐怖心を大きくします。
まとめ
固定や配置換えは手間に感じるかもしれません。
しかし、実際一度やってしまえば、動かすことはほとんどないので、手間は最初だけで済みます。
転倒における被害は非常に大きく、しているかしていないかが命運を分けるといっても過言ではありません。
もししていないようなら、家を見直してみてください。
大きな地震が起こる前に対策をしておきましょう。
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